
1 :番組の途中ですがアフィサイトへの\(^o^)/です :2019/07/27(土) 02:03:47.88 ID:HfCLJW18a.net
(打てる、きっと打てるぞ!)
星野君は、強くバットをにぎり直した。
(かんとくの指示は、バントだけれど、今は打てそうな気がするんだ。どうしよう……。)
ピッチャーが第一球を投げ込んできた。星野君は反射的に、思いきりバットをふった。
バットの真ん中に当たったボールは、ぐうんとのびて、セカンドとショートの間をあざやかにぬいた。ヒット! ヒット! 二塁打だ。ヒットを打った星野君は、二塁の上に直立して、思わずガッツポーズをとった。この一打が星野君の所属するチームを勝利に導き、市内野球選手権大会出場を決めたのだ。
その翌日も、チームのメンバーは、練習を休まなかった。決められた午後一時に、町のグラウンドに集まって、焼けつくような太陽の下で、かた慣らしのキャッチボールを始めた。
そこへ、かんとくの別府さんが姿を現した、そして、
「みんな、今日は少し話があるんだ。こっちへ来てくれないか。」
と言って、大きなかしの木かげであぐらをかいた。
選手たちは、別府さんの周りに集まり、半円をえがいてすわった。
「みんな、昨日はよくやってくれたね。おかげで、ぼくらのチームは待望の選手権大会に出場できることになった。 本当なら心から、『おめでとう。』と言いたいところだが、ぼくにはどうも、それができないんだ。」
別府さんの重々しい口調に、選手たちは、ただごとではなさそうなふんいきを感じた。
別府さんは、ひざの上に横たえたバットを両手でゆっくり回していたが、それを止めて、静かに言葉を続けた。
「ぼくが、このチームのかんとくになる時、君たちは、喜んでぼくをむかえてくれると言った。そこでぼくは、君たちと相談して、チームの約束を決めたんだ。いったん決めた以上は、それを守るのが当然だと思う。そして、
試合のときなどに、チームの作戦として決めたことは、絶対に守ってほしいという話もした。君たちは、これにも気持ちよく賛成してくれた。そうしたことを君たちがしっかり守って練習を続けてきたおかげで、ぼくらのチームも
かなり力が付いてきたと思っている。だが、昨日ぼくは、どうしても納得できない経験をしたんだ。」
ここまで聞いた時、星野君はなんとなく
(これは自分のことかな。)
と思った。けれども自分がしかられるわけはないと、思い返した。
(確かにぼくは昨日、バントを命じられたのに、バットをふった。それはチームの約束を破ったことになるかもしれない。しかしその結果、ぼくらのチームが勝ったじゃないか。)
その時別府さんは、ひざの上のバットをコツンと地面に置いた。そしてななめ右前にすわっている星野君の顔を正面から見た。
2につづく
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